地衣類VS蘚苔類 それぞれの戦略


石の上のハゲたように見える部分
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どういうわけか、蘚苔類(緑色のコケ)が入り込めない陣地
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地衣類(白っぽい部分)が、侵略を拒み続けている場所
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すぐそこまできているのに
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何がなんでもぜったい入れたれへん!というまるで強い意思があるような拒否っぷり
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以前、ハイゴケと地衣類の攻防戦の行方をゆるゆると観察してみたのだが、
ハイゴケが覆いそうになるも小さな丸い模様にしか見えない地衣類を2年かけても覆いきることはなかった。
周りを囲みつつにじり寄りながらも、なかなか本丸まで辿りつかないのだ。

その攻防戦略について専門家のY先生にうかがったところ
「蘚苔類と地衣類のせめぎ合いですが、地衣類には地衣成分という化学兵器があります。一方蘚苔類には覆い被さるという物理兵 器があります。それぞれの兵器はもちろん有効ですが、勝負に最も有効なことは周囲の環境変動です。乾燥が進むと地衣類が、湿潤になると蘚苔類 が有利です。また、日射量が減ると地衣類には不利です、逆に高くなると蘚苔類に不利になります。」
というお答えをいただいた。

なるほど~!なんてわかりやすいんだろう。

地衣類VS蘚苔類=化学兵器VS物理兵器。
先ずはこのことに深く頷いてしまった。

▽とあるハイゴケと地衣類のせめぎあいを上から見るとこんな感じ。
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▽地衣類から少し離れた場所では、ハイゴケは石にしっかりとついていて
指でなでたくらいでは剥がれない。
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ところが、地衣類のいる場所では、侵入はしてみたものの
▽身体を浮かしていて、くっついていないのだ。
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▽ハイゴケ(物理兵器)「いややー!触れたくなーい!でも覆いたーい」 
地衣類(化学兵器)「やめろー! あっちいけー!」
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と実際言っているわけではもちろんないのだが、そんな風に見えてしまう。

▽石の側面においても、ハイゴケが地衣類の陣地の上では「腰を浮かし」、
茎先は地衣類のいない場所に着地している。
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ハイゴケが物理兵器をもってしても化学兵器には
なかなか勝ち目はなさそうに見えるのだ。


けれど目線を変えてみると、蘚苔類が覆っている場所では
地衣類の侵略が難しそうにも見え・・

▽下部だけくっきり緑色(蘚苔類)で、上部はほとんど全面地衣類。
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▽それがずっと続いている場所は
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▽斜めから見ると、石がこんな風に傾斜していて、下部の蘚苔類陣地は日陰で湿度が高い。
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「乾燥が進むと地衣類が、湿潤になると蘚苔類 が有利」
「日射量が減ると地衣類には不利で、逆に高くなると蘚苔類に不利」

化学兵器と物理兵器、そしてそこに環境や天候という味方(または敵)が加わって
攻防に優劣が生じる。

そうか。そういうことだったのか~!

蘚苔類も地衣類もたくさんの種類が存在するので
攻防戦の様子にも色々と違いがあるのかもしれないが
長い目でその経過を観戦(観察)するのは面白いと思う。

今後進展が気になるご近所の大決戦がこちら。

▽先陣を切るチャレンジャーなヒトデゼニゴケ(タイ類)。このまま覆うのか?
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▽「覆う」攻撃もしているように見える白い地衣類。蘚苔類押し切られるのか?
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▽むむ。チャレンジしたが、化学兵器にやられたか?ジャゴケ(タイ類)
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▽おや?こちらのジャゴケの「覆う」攻撃では
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▽なんと、覆った場所から地衣類が消えているではないか。
しかし、ジャゴケも身体を浮かしている状態。どうなるジャゴケ。どうなる地衣類?!
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写真を撮った場所を正確に覚えているか、ちょっと自信が無いのだが(^_^;)
季節の変わり目に、勝負の様子を見に行ってみたいと思う。




また、Y先生によると、地衣類は生育が遅いので急激な環境変化にはついていけないのだそうだ。
そういえば、ウメノキゴケたちは排気ガスに弱いらしく都会では見られないと聞いたことがる。
ウメノキゴケ 

蘚苔類目線でみると、地衣類は強硬に見え、延々と生きているような錯覚にさえ
陥ってしまいそうだが、彼らもまた日々変化する環境に左右されながら生きているのだ。

そうそう、地衣類は蘚苔類より虫などに食べられる機会も多いようで・・

ウスバフタホシコケガ→★★★
キマワリ→★★★
シラホシコヤガの幼虫→★★★

さすがの化学兵器も好まれて食べられてしまえばどうしようもない。
けれど、身体の一部を差し出すかわりに、もしかしたら動くものに胞子や粉芽をくっつけて
陣地を広げる戦術のひとつなのではないかとも考えてしまう。

このダニは地衣類を食べるそうだが、身体に地衣類を背負ってウロウロとしているのだ。
ダニ→★★★
こういった戦術?についてご存知でしたらぜひ教えていただきたいです。


ちなみに、キサゴゴケ(蘚類)は、この白い粉のような地衣類(レプラリアゴケの仲間)↑が着生しているスギに生育している。
キサゴゴケ

地衣類と蘚苔類が「仲良く」なのか「仕方なく」なのかはわからないが
同じような環境が好きな地衣類と蘚苔類がたまたま
そこに居合わせているにすぎないのかもしれない。


何気なく覗いていた石のもよう木のもよう。
そこでは、地味でゆっくりだけれど、たしかに地衣類と蘚苔類の
熱戦が日々繰り広げられているのだと思うと、ひそかに応援したくなってしまう。

そして、蘚苔類が受ける地衣類の「化学兵器」はいったいどんな風に
効いているのか、コケたちにインタビューしてみたい気持ちになるのだった。









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musimegane

アート目線のコケ観察。
いきもののカタチは美しい。

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